しかし、それは大抵の場合、見つからない。 その金色があるはずのハンモックは、包んでいた重さを失い、今ではただの網になって僅かに揺れている。 けれど、ルフィはそれで安心する。 自分が目覚めたとき、あの金色は見当たらない方がいい。 それこそが、日常。 そして、微かに漂ってくるイイ匂い……。そこから連想される食い物の数々に、途端に空腹を訴え始める腹。 これも、日常。 今日もいつもと同じ朝を迎えたことに、ルフィは満足し、ハンモックから飛び降りた。 向かう先は、もちろんラウンジ。 この部屋には見当たらなかった金色の頭が、嬉しそうに楽しそうにくるくると動き回っているだろう場所。 ルフィは今朝もまた、自分が一番におはようを言うために、急いで男部屋のハシゴを上った。
包帯だらけで、白いお城に負けないぐらいに白い顔で、すぐ隣のベッドで眠ってた。 僅かに胸が上下していることで、生きていることはわかったけれど……。 ルフィは包帯が巻かれた自分の手を差し出し、力なく投げ出されている白い手を握った。 ルフィが大好きなすっごく美味い料理を、たくさんたくさん作ってくれる、この手。 魔法のように動いて、魔法のように美味いモンを生み出していくこの手に、ルフィはいつも見惚れる。
ルフィは隣のベッドで眠る彼に、そっと呟いた。 「こんなのは、チガウ。おれが目覚めたとき、お前は寝てちゃ、ダメなんだ。 誰よりも早くに起きるのがコックだって、いつも言ってたじゃねぇか。 だから、お前は起きてなくちゃダメだ。おれよりも先に起きて、いい匂いでおれを起こしてくれなきゃ、ダメだ。 こんなのは、チガウ。絶対に、チガウ……!」 ルフィはつないだサンジの手を、更にぎゅっと握りしめた。 「だから、俺は寝る。もう一度、寝る。そん時こそ、サンジは起きてろ。絶対だぞ……!!」 そして、ルフィはその手をつないだまま、もう一度目を閉じた。
次の目覚めは、サンジが起こしてくれたことによってもたらされた。 ただし、いい匂いではなく、蹴りによって。 「クソッ、なんでテメェと仲良く手ぇつないで寝なきゃなんねーんだよ!、しかも離れねーしっ。 とっとと起きて、手ぇ離しやがれ、このクソ野郎ーーっ!!」 目覚めたルフィの目に映ったのは、 離そうとすると伸びるだけのルフィの手と、必死になって格闘しているサンジの姿。 つないだ手は先程とは違って温かく、顔色はもう白くはなかった。 (……もう、チガってねぇ。いつもの、だ。いつもの、サンジだ) 自然と、ルフィの顔が綻んだ。 「なに、笑ってやがる!。いいから、手ぇ離せっての!。オロスぞ、コラァ!!」 「ししし。いいじゃん。もっとつないでよう。減るもんじゃねーし」 「おれの神経が磨り減るっ!。……だー、余計に強く握んじゃねーっ!。緩めろっての!。でねーと……」 「でねーと、なんだ?。……もしかして、痛ぇのか?」 手に怪我でもしているのかと思い、ルフィが問うと、サンジは赤い顔をして、心持ち俯き加減で呟いた。 「……痛いのはテメェだろ。包帯巻いてあるじゃねぇか。怪我、してんじゃねぇのかよ……?」 消え入りそうな声で言うサンジ。その顔は金色の髪に隠れてよく見えない。 僅かに見える、今は色を取り戻した唇が小さく言葉を繋いだ。 「……さっき気がついたとき、医者のばーさんに会った。お前、おれとナミさん抱えてここまで上ってきたんだってな。 手が、血だらけだったって言ってた……。だから……その……」 ますます俯いていく金色の頭。彼があんなに必死になって手を外そうとしていたのは、そういうわけだったのだ。 「おお、いてぇぞ!。すっげーいてぇっ!」 ルフィの言葉に、サンジは弾かれたように顔を上げた。 「ホラ見ろ!。やっぱいてぇんじゃねーか!。だから、離っ……」 しかし、ルフィは満面の笑み。一向に痛そうではない。 「て、てめ……っ!」 だまされた事に気付いたサンジが、怒りの鉄足を振り上げようとするより一瞬早く、ルフィはつないだ手をぐっと引いた。 バランスを崩したサンジは、上半身を起こした格好であるルフィの胸の上に倒れこんだ。 「……って!。ばか、何しやがんだよっいきなり!」 慌てて体を起こそうとするが、今度は反対側のルフィの腕がしっかりとサンジの体を抱きかかえてくるので身動きが取れない。 それでも何とか離れようと努力するサンジの耳に、心底ホッとしたようなルフィの声が響いた。 「ああ、あったけぇ……。体もちゃんとあったけぇな……サンジ。 生きてるんだなぁ……お前……。良かった……ホントに良かった……」 そう言って再びぎゅっと力を込めて抱きしめられる。 背中を中心に体中が痛かったけれど、サンジはそのままおとなしくしていた。 なぜなら、肩口に感じる温かい雫の正体に思い至ったから。 ルフィの体が震えているのを感じたから。 だからサンジは握られていない方の手を、ルフィの背中に回した。 部屋はあたたかいのに、微かに震えているルフィの背中を、そっと抱きしめた。
自分の大切な人たちを守るためなら、何だってする。それが自分の命を投げ出すことになってしまっても。 それがルフィの主義とは反することは知っている。 この少年はどこまでも真っ直ぐだ。どこまでも、自分というものを貫いてゆく。いっそ潔いほどに。 けれど……けれど自分は……。 「……すまねぇ。ルフィ。おれは、こんなだ。こんなふうでないと、おれは生きていけねぇ。 ……それでも、いいか?。それでも、おれはお前の仲間でいても、いいのか……?」 ルフィの肩口に顔を埋めてサンジが問う。 こんな俺でもお前は……受け入れられるか?。 「あたりめぇだ!。おれはサンジがいいんだ!。サンジだから、いいんだ!。 今度みたいなバカな事をまたやったら、ぶっ飛ばしてやるけど……、 それでも、それでもおれはサンジが好きだ!。大好きだっ!。
そうして、抱きしめていた腕を緩め、サンジの顔を覗き込む。 サンジは真っ赤な顔をして、あわあわと言葉を失っていた。 それでも、キレイな青い瞳が真っ直ぐ自分に注がれているのが嬉しくて、ルフィはにっと笑った。 「なーに慌ててんだよ。いっつも言ってんだろ?。サンジが好きだって。おれ、ウソはつかねーぞ!?」 何十回となく言っている。サンジはいつも適当に聞き流しているようだったが。 「そ、そそそりゃそうだけど……。け、けど、まさか……、まさかそういう意味だとは……っ」 サンジの目が泳ぎだした。ルフィが本気で言ってるってことを察したためであろう。なら、好都合だ。 「サンジだっておれのこと好きだろ?。あんなに嫌がってたのに、結局は自分からおれに付いてくって言ったし、 今度だっておれを助けるために死に掛けたし……」 「て、てめーじゃねぇっ、おれが助けたのはナミさんだっ!。てめーはあくまでついでだ!。フロクだ!。グ○コのおまけだ!!」 「おお、グ○コのおまけか!。あれってやっぱおまけがメインだろ?。なんだ、おれたちらぶらぶかぁ〜!!」 「ち、ちがうぞっ、ルフィ!。おまけ食っても3百メートル走れねぇだろっ?!。メインはキャラメルだ!!」 「いくらおれでも、おまけは食わねぇ。やっぱりメインはおまけだ!。おまけはおれだ!。 やっぱりサンジはおれが好きなんだーーっ!!」 「〜〜〜〜〜〜〜〜っっ」 この訳の分からぬ論争を最後に制したのは、どーんっという効果音と共に言い張った、ルフィの方だった。 パニックに陥っていた分、初めからサンジに勝ち目などはなかったが。 「……え?……あ、あれ……??」 気がつくといつのまにか、サンジはベッドに押し倒されていた。その上にルフィが被いかぶさってくる。 (お、おいっ!?、まさか、もしかして、絶対絶命じゃねーか!?、おれ〜〜っっ!!) 力で敵わないのはわかっている。何といっても、人を二人も抱えて絶壁を上れる男なのだから……。 それを思い至ったサンジの体から、僅かに力が抜けた。 (……そうだ……、結局はまた、コイツに助けられたんだよなぁ、おれ……) ルフィのことは確かに好きだ。 夢へ向かうきっかけをくれた事には感謝しているし、その真っ直ぐな強さにはとても惹きつけられる。 そして何より、彼ほど自分の料理を美味そうに幸せそうに食ってくれる相手に出会ったのは、初めてだった。 特別な思いは確かに……持っているかもしれない。 けれど、それはあくまで付いていくべき船長としてであって、決してこういうことではない……筈だ。多分。 (大体、男だぞおれは!、おかしくねぇか?!。……い、いや、ルフィにそういう常識は通用しねぇよな……けど、だからって……) 相変わらず、頭の中はパニック状態だ。 しかし、何とか僅かな望みに思い至り、キスしかけてくるルフィを押しやりながら、サンジは必死に話しかける。 「そ、そうだ、んなことより、腹へっただろルフィ?。ここのキッチン借りてなんか作ってやるぜ!。シチューなんてどうだ?。あったまるぜ〜」 対ルフィでの超必殺技であるにもかかわらず、ルフィは首を振った。 「腹はへってる。けど、メシはいらねぇ」 「な、何でだ?。腹へってるお前が、メシをいらねぇだなんて……」 ……信じられない。 しかしルフィは、真っ直ぐサンジを見つめたまま、きっぱりと言い切った。 「メシの代わりに、今からサンジを食うんだ!。お腹いっぱいぜーんぶ食って、サンジをおれのモンにする!。 おれのモンにして、サンジがおれから離れられないようにする!。もうあんな勝手なこと出来ないようにする!。 もう絶対に離さねぇし、絶対に死なせなねぇ。ずっとずっとおれの側に……一緒にいられるようにするんだ!!。絶対だっ!!」 「………………」 ルフィの瞳は真剣だった。その黒い瞳は雄弁に語っていた。ルフィがどれだけサンジのことを、思っているかを……。 (まるっきり、プロポーズじゃねぇかよ……。おれがレディなら、イチコロだな。お城の中ってシチュエーションも悪くねぇ。 ……けどおれ、レディじゃねぇし。……レディじゃねぇのに……なんで……、なんだって……こんなに…………)
(……チッ、クソゴムなんぞに……ほだされるなんて…………。ヤキがまわったか、おれも…………) 心中で愚痴る言葉とは裏腹に、サンジの腕は自然にルフィの背に回っていた。 (こうすると、コイツけっこう肉ついてるよなぁ。出会ったときより、背も伸びてるし……。 おれが作った料理は、確実にコイツの中で生きてんだ。コイツを、生かしてるんだ。 そのコイツが……おれを生かす……。そして、生かされたおれが、また、コイツを……。 はは、まるで食物連鎖だ。もともと繋がってたのか、コイツとおれは……。
「サ、ンジ?」 サンジの変化に、ルフィの方が訝ってその顔を不思議そうに覗き込んだ。 そういう顔をするととたんに幼くなってしまうルフィに苦笑する。とても大胆な告白をしてきた男には見えない。 けれど彼は、ルフィはこういう男なのだ。 子供のような見かけに反し、その器の大きさと懐の深さは誰にも負けない。 自身の言う通り、次の海賊王に相応しい男だ。きっと、誰よりも。 その男に、自分は求められているのだ。こんなにも、熱く……。
「……言っとくが、おれを食うなら全部食え。残したら、許さねぇ……。 おれを食ったら、お前はもっと大きくなれ。強くなれ。そして新しいお前になれ。 そのためになら……、おれはお前に食われてやっても、かまわねぇぜ……」 モンキー・D・ルフィという男の一部になりたい。この、偉大な男の長い人生の一部を担ってみたい……。 サンジはこの時、本気でそう思った。 この言葉に、ルフィの大きな瞳が更に見開かれ、そして、全開の笑顔に変わった。 「ししし。おう!、全部食うぞ。サンジを全部食って、おれは大きくなる。 大きくて誰にも負けない強いヤツになる!、約束するぞ!、サンジ!!」 高らかに、ルフィが二度目の宣言をしたときだ。
驚いて振り返ると、扉が開いている。しかし、人の姿がみえない。 キョロキョロ見回していた視線を少し下にずらしてみると、それは……いた。 茶色い、もこもこしたものが、扉の影でコチラを伺っていた。 その頭には立派な角。あの、形は……。 「……鹿だ、ルフィ。ありゃ、鹿の角だぞ!?」 サンジの言葉に、ルフィの瞳がギラリと光った。 「鹿……、てことは肉かっ!?、に・く・かぁぁぁーーーっっ!!」 あまりにもルフィらしい雄たけびをあげ、ベッドから転がるようにして降りる。 「うっぎゃああーーーーーっ!!」 その迫力に、鹿のようなもこもこは、叫び声を上げて逃げ出した。 「待てーーーっ!!、肉ぅーーーーーーっ!!」 すぐさま追おうとしたルフィがふと立ち止まる。そして、イタズラっぽい瞳で背後のサンジを振り返った。 「サンジがその気になってくれたのは、おれすげぇ嬉しい。けど……やっぱ、腹ごしらえはしとかねぇとな。 目が覚めたらサンジの料理。いつものこれじゃないと、やっぱ始まらねぇ。 サンジは大好きだけど、サンジのメシも、おれはすっげー大好きだからなっ!!」 サンジも、そんなルフィを見て苦笑する。 「おう。その方がよっぽどお前らしいぜ。腹が減っては戦はできねぇっていうしな。 ……それに、鹿肉なら、ナミさんに精がつく料理をつくれそうだぜ!!」 がぜんサンジもやる気になり、ベッドから飛び降りる。 そしてそばにきたサンジの、ルフィは掠めるようにしてその唇を奪った。 「……なっ!?、てめ!!」 「しし、とりあえずはこれだけだ。けど次は、覚悟しとけよ!。サンジ!!」 顔を赤らめるサンジを満足そうに見て、ルフィはそういい置き、部屋を飛び出した。
そして、サンジの側から離れない。 後からわかったのだが、どうもルフィがサンジを食わないように見張っていたらしい。 「共食いは自然界における最低のことだぞ!」とか何とか延々と説教もされた。 幼くて真面目な医師に本当のことは言えず、ルフィもサンジも曖昧に笑うしかなかった。
ナミが今日にはどっかの島に着くって言ってたしな〜」 持ち前のポジティブな考えに切り替え、ルフィは鼻歌交じりにラウンジの扉を開けた。
初めて会ったときに一目で気に入った金髪のコック。 空腹で死に掛けてたギンに飯を食わせ、自分の方が嬉しそうに笑っていた。 その笑顔に、決めた。その笑顔を今度は自分に見せて欲しくて、決めた。 「おはよう、サンジ。美味そうな匂いだな!」 そして、その笑顔は今、一日で一番初めにルフィがこう言った後、必ず見せてくれるようになったのである。 「おう、いつも早ぇな、ルフィ。……これでも飲んで、もちっと待ってろ」 そうして、まるでルフィが起きてくるのが分かっていたかのように、 ルフィの好きなミルクたっぷりのカフェオレを、テーブルに置く。ルフィの指定席に。 けれど、ルフィはまだ、席には座らない。 だって、これもいつもと同じなら、カフェオレは熱々で、まだ飲めない。ルフィはどっちかと言うと猫舌なのだ。 だから、飲まずにそのままサンジの元へ行く。 忙しそうにしているサンジの腰に手を回し(文字通り、回す。三重ぐらいかな?)、ぴたりとその背にくっつく。 「オイ……」 低い声が聞こえたけれど、離れない。 サンジはそのまま料理を続けてるし、足は自由なのに、得意の蹴りは出てこない。……今では。 これも、最近は日常になった。だから、離れなくていいのだ。 体をぴったりとくっつけたまま、金色の後ろ髪に鼻先をくっつけると、微かに良い匂いがした。 彼が愛用しているシャンプーの香りだ。 この香りが大好きなルフィは、鼻をくんくんならし、髪と同じ匂いのする項をぺろりと舐め上げた。 抱きついてる細い体に、途端にぴくんと衝撃が走った。 さすがにサンジは手を止め、低い声で、 「……いつもと、違うじゃねぇか……」 と呟いた。 そうだ、コレは違う。日常とはちょっとばかり……。 「オウ、違うな。でもな、いつもと違うこと、したくなった。 いつもと同じで、いつもと違うことが、したくなったんだ」 「??……なんだそりゃ。わけわかんねぇぞ?」 サンジが訝しげに、背中にくっついているルフィを振り返る。 その青い瞳を、覗き込みながら、ルフィは言った。 「おれ、いつもと同じ朝が大好きだ。いつもと同じにサンジと過ごせる朝が大好きだ。 だから、そのいつもと同じってのを増やしていきたいんだ。たくさんたくさんな色々なことをいつもと同じにしたい。 “日常”ってのを増やしたいんだ。おれと、サンジとの……」 そしてルフィは、目の前にあるサンジの唇に自分の唇でそっと触れた。 すぐに離れたけれど、サンジはたちまち真っ赤になってしまった。 「おまっ……。朝のラウンジではこういうことはすんなっていつも……っ!」 「ししし。コレも“日常”にしてぇ。おれの大好きな朝のサンジにも、一杯してぇからvv」 そう言って再び口付けようとするルフィの顔を、必死でブロックするサンジ。 「ばか、わかってんだろ!?。匂いにつられて早起きなのは、お前だけじゃないんだって!。 これ以上、こういうとこ見せちまったら…………!!」 しかし、ぱたぱたという独特の足音の後、いつもより少し早く、ラウンジの扉は開かれた。そして、そこには小さな船医の影。 これも、実は日常。 「あー、ルフィ!!。サンジ食ったらだめだっていつも言ってるだろ?。離れろよ!!」 「ししし。やだ。おれ、今朝はずっとサンジにくっ付いていてぇんだ。これを、いつもと同じにするんだ!」 ルフィは抱きついている手のひらでサンジのわき腹をそっとなぞった。 ひっと小さく声を上げたサンジの薄い唇を、すばやくもう一度奪う。 「ししし、やっぱうめぇよな、サンジは!」 しれっとした顔で、ルフィが言う。 「だめだったら!。サンジ食ったら、おれ、ルフィでも許さないぞ!!」 半分泣きそうな顔で、チョッパーがルフィの腕を必死にサンジから離そうとする。 キスシーンを目撃しながらも、いつもと変わらないチョッパーを訝ってサンジは聞いてみた。 「なあ、チョッパー。お前、キスって知ってるよな??」 「知ってるぞ!。バカにすんなよ!?」 「じゃあ、今、ルフィがおれにしたことは……?」 「食おうとしてるんだろ?。サンジもちゃんと言わなきゃだめだぞ。共食いはいけない事だって!!」 サンジはひどい脱力感に苛まれた。 「ししし、やっぱりお前はおもしれぇなぁ。さすがは七段変形するシカだ!」 「トナカイだぁーー!!」 自分を挟んでやいのやいの言い合ってるゴムとトナカイを無視することにして、サンジはそのまま調理を続けた。 サンジの注意が自分から逸れたのを不満に思い、ルフィは再び、サンジの首筋をペロリと舐め上げた。 「…………っ!!」 びくっとして、思わず手にしたお玉を取り落とす、サンジ。 「サンジってココ、弱ぇんだな〜。覚えとこっとvv」 「ルフィ〜〜、てめぇっ……!」 今度こそ、容赦なく蹴り飛ばしてやろうと思い、振り返ったサンジの眼に映ったのは……、 ルフィの、本当に嬉しそうな、幸せそうな笑顔だった。 「ししし。おれ、しあわせだぞ、サンジ。こうやっていつもと同じが増えていくんだ。 おれとサンジのいつもがいっぱいいっぱい、増えていくんだ、増やしていくんだ。おれとお前とで、ずっと……」 「ルフィ…………」 サンジはこの笑顔に弱い。自分の料理を食べるときと同じ、この笑顔に。 (結局はおれも惚れてるってことか……?。認めたくはねぇけど。 ……未来の海賊王になる男には、やっぱ、敵わねぇってことなのかもなぁ……) サンジは苦笑してため息をつくと、これ以上イタズラさせないために、カリカリベーコンを一切れルフィの口に放り込んでやろうとした。
“せっくす”を、“いつも”の中に、入れるんだぁぁーーーっっ!!」
「構うなっ。それより、トナカイ!。今聞いた事は忘れろっ!。全部忘れろっ!。いいなっ!?」 「き、聞いたって、ソックスのこと?。ソックスをいつもの中に入れるってなに?。洗濯カゴのこと??」 「…………なら、いい。……ああ、そこのアホゴムはほっとけ。お前はレディたちを起こしてこい。もうすぐ朝ご飯できますからってな」 「でも…………」 「いいから、いけ!!」 「わ、わかった!!」
頭にフライパンをめり込ませたままで…………。
えむりさんかのところで幸運にもキリバンを踏みまして、リクをさせて頂きました。 アニメがあまりにもルサンだったもので、 その流れに乗って 『サンジにセクハラする船長』でリクをお願いしました。 すっ 素敵だ〜〜vv 無邪気にやらしい船長がツボですv そんな船長に振り回されるコックもツボですv お子様なトナカイもツボですv えむりさん、どうもありがとうございましたーv |