その一室で屋敷の主である政宗はげんなりしていた。 その原因は彼の式神である2人が、仕事をするために机に向かっている政宗を挟んで言い争いをしている事に始まる。 その言い争いは政宗にとってどうでもいい内容だったが、二人にはそうはいかないらしく、なかなか白熱している。 最初はどちらが政宗に役に立っているかというモノだったと思うが、今は少々この場から逃げ出したくなる内容に変化しつつあった。 もう勘弁してくれ。 書を認める手を止めてまたひとつ、ため息をつく。 口げんかは他所でやって欲しいと思ったが、内容が内容だけにこの部屋から追い出せない。 こいつら分かっててやってんのか? 苛立つ政宗の耳に二人の言い争う声が入ってくる。 「俺の方が政宗の役に立っているもんね」 「何を言う。俺より低レベルの癖に」 「レベルなんて関係ないね。要は気が利くか利かないかだよ。その点俺は政宗が疲れた様子なら肩を揉んだりとかしてさ〜、こ〜ゆうのを役に立ってるって言うんだぜ?」 お前ら二人ここで争う時点で俺の役には立ってねぇ! と思いつつ仕事をこなしていく政宗。 ある意味この状況で自分のペースを乱さないのは凄い。 「力だけが全てじゃないんだよ?ユーシー?」 些か発音に疑問はあるが、二人は政宗を真似て英語を話す時がある。 「承知!時にはてくにっくも必須だ」 ああ、テクニックね…と、これまた発音が怪しい幸村の英語を脳内で正しい発音に直しつつ、ふと政宗は首を捻った。 自分たちが政宗に役に立つかどうかにテクニックが必要なのか? 戦闘の技術の話か? よくよく話を聞いてみると、随分ととんでもない方向に進んでいた。 「よく言うよ、いつも力づくで犯す男が。政宗いつも痛がってるんじゃないのかい?」 「何を言う。この俺が政宗殿を毎回無理やり犯しているとでも言うのか!」 ちょーっと待て!! 何でそっちの方向に行く!! このままだと嫌な事態になりかねない。 軌道修正を図るべく、話に割り込もうとした政宗に幸村が後ろから腰を抱く。 予想していなかった幸村の行動に政宗は少なからず驚き振り返ると、幸村は目を合わせニヤリと笑いとんでも無いことを言い出した。 「なら政宗殿に聞いてみるとしよう」 「ゆ…幸村?!」 幸村の目に燻った欲望がちらつく。それを見て政宗は焦った。 ヤバイ。いよいよ嫌〜な展開になってきた。 一人焦る政宗を他所に、幸村は抱きしめた愛しい人の着物の合わせ目からするりと手を入れる。 「政宗殿、前田に言ってくだされ。いつも俺の下で好い声を上げていると。力づくでは無いと。気持ちが好いと」 言えるか、馬鹿! と、怒鳴りたい所だが、幸村の手が政宗のよい所をイヤラシイ感じで撫上げるので、うかつに声も出せない。 出ても喘ぎ声になりかねない。 それは絶対イヤだ。 うつむいて耐える政宗をどう思ったのか、今度は慶次が正面から政宗に絡みつき、耳元で囁いた。 「我慢しなくていいんだよ?政宗。幸村の事なんか気にしないで、ホントの事言っちゃいなよ」 彼の手もまた政宗をイヤラシイ感じで撫で回している。 お前ら良く喧嘩するくせに行動が同じなんだよ! 頭の中で文句は言えど、声に出せず。 無言で堪える政宗を見てどう思ったのか、二人の行動はエスカレートするばかり。 どうしよう。 こいつら、殴りたい。 この際だ、竜の爪で引っかいてやろう。どうせこいつらその程度じゃ死ぬ事ないし、と両方の手に力を入れると、それを感じ取った二人は示し合わせたかのように政宗の腕を一本づつ拘束した。 「おっと、危ない真似は良くないよ?政宗」 「有無、屋内でそれは不味かろう」 あんた達ホントに仲悪いんですか? そう聞きたくなるほどの阿吽の呼吸で政宗を封じ込める式神達。 主人を護る為にあるはずなのに、主人を拘束するとは何事か! 頭にきて二人を睨み、目で訴える。 が、 「政宗殿、その様な潤んだ目で見つめられて…。もう我慢出来ぬと申すか?」 「いいねぇいいねぇ、3人でしっぽりってのも悪くないよ」 都合のいいように勘違いしたのか、訴えは別の意味に受け取られたようで、二人とも鼻息を荒くして政宗の着物を脱がしにかかる。 幸村が背後から帯を解き肩から着物を落とせば、慶次は裾をめくり上げ太ももも露にする。 こいつらの仲が悪いのは同族嫌悪で、興味が同じ方向に向かうと、こんなにもすばらしいコンビネーションを発揮するのか。なるほど。 と、こんな状況にもかかわらず自分の式神のプロファイリングという名の現実逃避をしてしまう政宗。 後ろから胸を撫で回し首筋に吸い付かれ、前から太ももを撫で回し内股に噛み付かれ。 最終手段の竜の爪も封じられ、二人の式神にいいように撫でまわされ。 ああ、俺ここで二人に喰われちゃうのか…。と思ったその時。 すぱんと小気味良い音と共に障子が開け放た。 もはやお約束な登場の仕方をしたのは、政宗の守護神小十郎である。 とたんに二人の式神はその手を止める。 小十郎は室内に入ってくると、ゆっくりと二人を見渡す。 式神二人はその場で固まっている。 彼らにとって小十郎は、天敵中の天敵である。 ほとんど着物を脱がされている政宗を二人の腕の中から救い出すと、小十郎は地を這うような低い声で式神どもを威嚇した。 「おめぇら、政宗様に何しやがった」 何しやがったって、する前にアンタが来たんでしょ? と言いたかったが、二人にそんな勇気は無い。 最上級に怒っている小十郎に勝てるのは政宗だけなのだ。 慶次が冷や汗をかきながら言い訳という名の状況説明をする。 「ええとね、政宗の着物の中に夢吉が入っちまったもんだから、とっ捕まえようとしてだね…」 「そっ、その通りでござる!片倉殿。前田の小猿が政宗殿に小ざかしい真似を致しましたゆえ、成敗を…」 「ちょっと待った!夢吉を悪く言わないでくれるかい?」 あ、また始まった。 仲良く口裏合わせていれば良い物をまたまた口げんかをし始めた二人に、政宗は着物を直しながらため息をついた。 言い争ってると今にボロが出るぞ? 「せっかく俺が旨く言い逃れしようとがんばってんのに、アンタ邪魔しないでくれるかい」 「邪魔とは何だ!お主の言い訳があまりに下手ゆえ、俺がふぉろーしてやったのだ!」 ほらな。 またもや出た下手な英語に苦笑しつつ小十郎を見上げると、眉間の皺がますます深くなっている。 心なしか左手が腰にさした刀の位置へと動いているような…。 「外でやれよ?」 小声で小十郎に囁くと、小さく御意とかえってきた。 ドンと大きな音で一歩前に出ると、 「真田!前田!俺に嘘を付くとはいい度胸だ。表出ろや!」 ドスの利いた声で二人を外へと促し抜刀する。 慌てて表へ逃げる二人とそれを追いかける小十郎。 それを見送ると、政宗は縁側に腰掛けた。 ああ、今日も言い天気だ。 大きく伸びをする政宗の視線の先には、小十郎から必死に逃げる二人の式神。 「お前ら、死ぬんじゃねぇぞ」 「承知!」 「だったら見てないで助けてくれよ〜」 |
エロい展開を期待された方、申し訳ございません。
絵でもあまり描かないですが、字だともっと書けないので…。
や、さすがに仕事中はエロいの書けないじゃん?
て事で、またしてもサボりつつ書いてたわけだ、私は。
なんかウチのもののけ物って
漫画は殺伐とした雰囲気で進み、SSはほのぼのとした雰囲気で進むらしいですね。