天に舞いたる蒼き竜 ―序―
くすんだ空の下。 その大地に広がるのは、つい先ほど終わった戦で命を失ったであろう死体の山。 その地に紅い戦装束に身を包んだひとり男が立っている。 ああ、あれは幸村さまだ。 我が主は戦の後、酷く無口になる。 高ぶった己を静めるために。 戦が終わり、血と硝煙と泥にまみれた死体しかないこの場所で、今もああやって心を静めているのだろう。 主の周りに転がっている死体の掲げている旗印は多くが奥州のものだ。 この平原での戦で、伊達軍は大半の兵を失い、砦のひとつに篭城した。 その中にあの蒼い竜もいる。
と不意に彼が俺の名を呼んだ。 「佐助」 「お呼びですか」 あまり大きな声ではなかったその声に答え、今まで人の気配すらなかった彼の後ろに、俺は姿を現した。 身を静めるために半刻は誰も近くに寄せ付けない主にしては珍しい。 「頼みがある」 相変わらず前を見たままだで、主は静かに話し出した。 「奥州の竜を欲しがる輩がいるのだ」 「ああ、あのお方でしたら俺でも欲しいですね」 主は小さく笑い、続けた。 奥州の竜、伊達政宗。 噂に違わぬ強さと、見る者を惹きつける美しさを併せ持つ独眼竜。 「明日の奥州との戦で、我が軍は勝利し、奥州は敗れる」 「はい」 そう、奥州の作戦は全て我が武田軍に筒抜けなのだ。 今砦に篭城している伊達軍の動向も何もかも。 「竜は捕らわれる、が、首を刎ねられる前に無体を強いられるだろう」 「はい」 お館様があの竜を見て、すぐ首を刎ねるなんて勿体無い事をする訳が無い。 その身を充分に楽しんだ後で首を刎ねるか、もしくは色小姓として飼うだろう。 「誰よりも早く、我が真田軍が独眼竜を捕らえるのだ」 「はい」 初めて対峙した日に言い表せぬ衝撃を受けたと、以前主に告げられた。 『まさしく、天にて舞を舞っているような、美しい竜であった』 彼の竜との戦いの直後、幸村様は興奮を隠しきれない様子だったのを覚えている。 『初めて、欲しい者が見つかった』 一時、人質として生きてきたせいか、何も欲しいものなど無いと言っておられた、このお方が。 『今すぐにでも、その竜を連れてまいりましょうか?』 『いや、まだいい。まだ機ではない。何より政宗殿は俺の名すら覚えてないのだからな』 『ですね、まだ武田軍の紅い奴位しか思ってないでしょうね』 俺の発言に幸村様は肩を竦めた。 『これから何度も合いまみえるにつれて、俺の事が頭から離れぬようにする必要がある』 『はい』 『捕らえるのはその後だ』 という事は、今、機は熟したというワケですか。 「万事この佐助めにお任せを、幸村様」 軽い口調で請け負った俺に幸村様はやっとこちらを向いて笑った。 「頼もしい限りだ」 主の期待に満ちた目に、俺はへらりと笑って返した。 俺は幼きころよりあなた様にお仕えしてきました。 我が主の理となるのであれば喜んであなた様の手足となります。 例え武田の総大将を敵に回したとしても…。 明日は日の出と共に砦に篭城した伊達軍を攻略する。 天に舞いたる蒼き竜を天から引きずり堕とし、あなたへ捧げてみせますよ、旦那。
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最初に断っておきますが、
当サイトでは佐助の幸村への気持ちは忠誠心のみで恋愛感情はありません!
文を書くのに慣れてないので、佐助の一人称がとても固い人みたいです。
おかしいなぁ
つーか、こんなのを小説とは言いませんね…。
漫画で描く気がないので文で。
と、安直に考えた自分を呪ってます。
漫画描くより難しかった…。
小説書くのはなんて、人生で3回目という若輩ものなので、
多めに見てやって下さると嬉しいです。(涙)